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老け顔や薄毛、ケガの治療にも使われる「成長因子」って何?

幹細胞 成長因子

近年は再生医療を提供するクリニックが増え、再生医療に対する関心が高まっています。病気に対する治療だけでなく、例えば豊胸施術や頭髪の発毛を促す美容医療においても再生医療を導入しているクリニックがあり、多くの期待や関心が寄せられています。しかし、耳慣れない言葉や具体的な効果など、実情はあまり分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、再生医療のなかでも耳にすることが多い「成長因子」について、治療例と合わせて詳しくご説明します。

そもそも成長因子とは何でしょう?

「成長因子」とは、動物の体内で特定の細胞の増殖や分裂を促進するタンパク質の総称です。さまざまな細胞間で起こる過程の調整を行う働きをもっており、「増殖因子」「細胞増殖因子」とも呼ばれています。わかりやすく言うと、細胞の増殖や成長を促進する物質ということになります。
成長因子は細胞の種類によってそれぞれ存在し、働き方も異なります。主なものに、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、神経成長因子(NGF)、腫瘍増殖因子(TGF)などがあり、成長ホルモンもその一種に数えられます。
近年ではバイオテクノロジーにより医薬品として商品化されたものもあり、医療の現場で使用されています。

成長因子にはどんな種類がある?

それでは具体的に、どんな種類の成長因子が再生医療で使用されているのでしょうか。治療に使われている成長因子を挙げてみます。

・上皮成長因子(Epidermal Growth Factor,EGF)
肌の表皮幹細胞に作用します。表皮幹細胞に増殖の指示を出し、加齢やダメージなどによって乱れていたターンオーバーの周期を正常に近づけ、肌の生まれ変わりを促進します。若返り治療やスキンケア製品に使用されるほか、褥瘡(床ずれ)の治療にも使用されています。
EGFは1962年にアメリカの生物学者・コーエン博士によって発見されました。この発見により、後に博士はノーベル医学生理学賞を受賞しています。

・繊維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factors,FGF)
真皮の幹細胞に作用します。真皮幹細胞に分裂・増殖の指示を出し、その一部が真皮線維芽細胞に分化することで、より多くのコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などが生成されます。さらに血管新生、創傷治癒、胚発生なども関わっています。

・ケラチン細胞増殖因子(Keratinocyte GrowthFactor,KGF)
上皮細胞に作用します。別名「発毛促進因子」とも呼ばれ、毛母細胞に作用して増殖・分裂を促すことで毛髪を成長させると考えられています。その他にも、皮膚の表面と口腔、粘膜、食道、胃、腸管、乳腺などの多くの組織の上皮細胞に存在していることがわかっています。
また、再生因子が多く含まれた製剤や成分も治療に利用されています。中には、よく知られた製剤もあります。

・PRP(Platelet-Rich Plasma,多血小板血漿)
再生医療による若返り治療に使用されるPRP。血液の中にある「血小板」を多く含んでいる成分で、PRP自体がEGF、FGFをはじめPDGF(血小板由来増殖因子)、VEGT(血管内皮細胞成長因子)などさまざまな成長因子を放出します。

・プラセンタ
プラセンタはヒトの胎盤から抽出されるエキスです。母体と胎児をつなぐ胎盤には、総合的に成長を促進・活性化する作用が備わっており、HGF(肝細胞増殖因子)、NGF(神経細胞増殖因子)、FGF、EGFなどが含まれています。

成長因子を使った再生医療

上記の成長因子は製剤として、さまざまな分野の医療で利用されています。ここでは、その治療例をご紹介します。

(1)美容医療

・繊維芽細胞成長因子(FGF)を用いたシワ治療
加齢によってあらわれた顔のシワや肌の凹みにFGFを注入して治療する再生医療です。ハリや弾力の衰えは、真皮層のコラーゲン繊維などを生み出す「線維芽細胞」が衰えたことが原因であると規定し、線維芽細胞を増やす働きのあるFGFを直接注入することにより増殖させて、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の働きを活性化しようという治療です。

・PRP(多血小板血漿)を用いた美肌治療
患者の血液から遠心分離機を用いて抽出したPRPを、シワやシミの気になる部位に注入する再生医療です。PRPに含まれる様々な成長因子が肌内部で放出され、線維芽細胞や表皮細胞に働きかけることにより、コラーゲンの生成や表皮の成長などが促されます。ターンオーバーを整えてシワの改善を促します。

・プラセンタを用いたエイジングケア
プラセンタには、①皮下注射や点滴、あるいは内服なそで体内に取り込む治療と、②イオン導入やダーマペン(極細の針のついたペン)で肌に穴を開けて浸透させる美肌治療があります。

①は更年期障害や肩こり、肉体疲労、眼精疲労、不眠、肝機能障害、そして美肌治療などを目的として行われています。②はエイジングケアやニキビ跡改善などの目的で行われています。

(2)発毛・育毛医療

・ケラチン細胞増殖因子(KGF)などを用いた発毛治療
高濃度のKGFを毛包の発毛環境を整える目的で注入し、発毛を促す治療に使用されています。なかでも2006年にヨーロッパで成長因子を用いたメソ注入(薬剤を作用する部位に直接注入する治療法)が発表され、今日「HARG療法」と呼ばれる薄毛治療として確立しています。

(3)スポーツ医療

・PRPを用いたケガの治療
PRPは美容だけでなく、ケガや加齢による慢性的な関節の痛みの治療にも使用されています。テニス肘やアキレス腱炎、靭帯損傷、腱鞘炎などスポーツ選手がなりやすいケガの治療を目的としています。PRPを注入するだけの治療で、手術による切開などの負担がありません。日本人メジャーリーガーの大谷翔平投手もこの治療を受け、ニュースなどで話題になりました。

(4)歯科治療

・塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を用いた歯周病治療
歯周病でなくなってしまった歯周組織の再生を促進する治療です。bFGFが含まれた製剤を、欠損した歯槽骨部分に塗布することで、細胞が増殖して血管が再生され、ふたたびもとの歯茎に戻す再生医療です。

このように成長因子は、その種類や働きによって様々な治療に応用されています。
上記で述べたように、再生医療に応用される成長因子は自己由来のものか(PRP)、他人あるいは遺伝子組み換えによってつくられたものか(EGF、FGF、KGF、bFGF、プラセンタ)に分かれます。
自己由来幹細胞から放出される成長因子については、アレルギーや副作用などのリスクが少なく、より安全性が高いとアピールされています。自己の幹細胞から全ての成長因子が培養でき、必要な部位に使用されることが理想的ではありますが、現在の医療技術ではコストがかかりすぎてしまうことが難点です。
成長因子については、その働きの全てが解明されている訳ではありません。近い将来、研究が進んで新たなメカニズムや種類が発見されたり、あるいは安価に自己幹細胞由来の成長因子が利用できたりするなど、ますます治療に役立つ日がくることが期待されています。

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