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移植の方法は「注射」と「点滴」がメイン。意外と怖くない幹細胞移植について

幹細胞 注射

再生医療の領域で、臨床治療として行われている幹細胞移植。現在まで、加齢黄斑変性の治療にはiPS細胞が、白血病の治療には造血幹細胞やさい帯血が、乳がんで失った乳房再建治療には自己脂肪由来間葉系幹細胞が、それぞれ移植されています。

“移植”と聞くと、とても大がかりで大変な手術を思い浮かべる方も多いと思います。もちろん、移植手術や移植前の処置としてそういった治療が行われることもありますが、ほとんどは「注射」や「点滴」などの比較的簡単な医療行為によって行われています。この移植方法と目的について詳しく解説します。

幹細胞移植とは?

幹細胞とは、自己と同じ幹細胞が増殖する【自己複製能力】と、他の組織細胞に変化する【分化能力】の2つの能力が備わっている細胞のことです。私たちの身体の中にも存在しており、皮膚や血液のように、絶えず細胞が入れ替わり続ける組織を保つために、失われた細胞を生み出します。

幹細胞には、どのような細胞でも作り出すことのできる「多能性幹細胞(Pluripotent Stem Cell)」と呼ばれるものと、筋肉や骨、血液などを作り出す「成体幹細胞(Adult stem cell)」の2種類が存在します。

前者の自然な形態は受精卵であり、これを実験研究用に人工的に応用して作り出された「胚性幹細胞(ES細胞)」や、体細胞に遺伝子を導入して作られる「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」などがあります。後者には、骨髄にある「造血幹細胞」や、脂肪組織から得られる「脂肪由来間葉系幹細胞」などがあります。

移植の目的

幹細胞移植は、手術や薬物治療、放射線治療などの従来の手法では治療が難しい病気やケガで失われた機能や組織、器官を修復する目的で行われています。再生医療と聞くと、近年の新しい医療のようなイメージがありますが、たとえば白血病などの血液のがん治療で以前から行われている「骨髄移植」も再生医療の先駆けと言えるでしょう。骨髄移植は、赤血球や白血球の元となる造血幹細胞を患者の体内に投入し、身体の中で定着させて、新たに血液を作り出す目的で行われています。

幹細胞移植の方法とは?

再生医療による移植というと、再生医療技術で人間の臓器を再生して移植するといったイメージを抱く人も多いかもしれません。2019年4月のトピックスでは、東京慈恵医大と製薬会社がiPS細胞とブタの胎児組織を使って、人間の体内で腎臓を作る再生医療の共同研究を始めたと発表(※1)しました。また2013年には、京都大学iPS細胞研究所と理化学研究所多細胞システム形成研究センター、先端医療振興財団先端医療センター病院の共同グループが、滲出型加齢黄斑変性の患者に自己iPS細胞由来網膜色素上皮細胞シートを移植(※2)しています。この治療は移植治療の安全性を検証する目的で行われており、結果的に治療が安全に実施できることが示されました。こういった研究は世界中で行われていますが、今のところ多くの人に治療を応用するところまでは実現化していません。

現在の幹細胞移植は、さまざまな細胞に分化する幹細胞を「注射」や「点滴」によって体内に投入し、症状を改善しようという手法がほとんどです。「注射」か「点滴」かは、その治療目的によって異なります。以下にまとめてみました。

注射による移植の例

限定された部分の治療には、幹細胞を注射で移植する方法がとられます。

・変形性関節症の臨床治療
骨と骨がつなぎ合わされた関節部には、クッションのような役割を果たす軟骨があります。遺伝や年齢、性別、あるいは職業(スポーツ選手やピアニストなど特定の関節を長い間繰り返し使う職業)等が原因で、軟骨に裂け目ができてすり減っていき、関節のクッションとしての役目を果たすことができなくなる状態を「変形性関節症」と呼びます。

再生医療領域ではひざなどの関節症治療に自己脂肪由来の幹細胞移植が行われています。関節や関節周囲に注射で幹細胞を移植することで、炎症を抑えて組織を修復する事を目的としています。

・乳房再建臨床治療
乳がんの手術によって変形した乳房に、自己皮下脂肪組織由来の幹細胞を移植する臨床治療が2012年に鳥取大学にて行われました。脂肪幹細胞を使った乳房再形成は血管が新しく作られやすく、組織の萎縮も起こりにくいといったメリットがあります。こちらも患者の皮下脂肪から抽出した幹細胞を、注射にて乳房の陥没部分に注入するというものです。

この手法は自由診療の美容治療においてもバストアップ術として取り入れられています。

点滴

身体全体に幹細胞を行き渡らせる場合には、点滴での移植法がとられます。特に脂肪由来間葉系幹細胞は、血管やリンパ管の中を移動して、損傷部位を自ら探し出して修復・再生のために向かっていく性質があります。

・更年期の臨床治療
身体の修復や再生を行う幹細胞は、加齢と共に減少します。加齢によっておこる身体の不調に対し、幹細胞を補うことで、傷ついた部分や老化した部分を補修して身体全体の若返りを目指す治療です。
患者の皮下脂肪から抽出した幹細胞を培養・増殖し、数回に分けて点滴で体内に戻します。

・さい帯血移植
骨髄移植は白血病や血液疾患の治療のための「造血幹細胞移植」ですが、その他の治療に、赤ちゃんが生まれたときの臍帯(へその緒)に含まれる造血幹細胞を移植する「さい帯血移植」があります。

さい帯血には、白血球や赤血球などの血液を造る細胞(造血幹細胞)が多量に含まれており、出産時に任意で採取されたさい帯血は「さい帯血バンク」に冷凍保存され、白血球の型が適合した患者に移植されます。移植は輸血と同じように点滴で注入されます。

※1 https://www.ds-pharma.co.jp/ir/news/pdf/ne20190405.pdf
※2 http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/170316-060000.html

未来に広がる幹細胞移植の可能性

幹細胞移植はここに挙げた治療だけでなく、さまざまな治療への応用が期待されています。これまで述べた慢性血小板減少症や変形性関節症、眼疾患などをはじめ、パーキンソン病、糖尿病、心筋梗塞・心筋症、筋ジストロフィーなどの治療の研究が進んでいます。

新たな治療法が出てくるにつれ、移植の方法もまた変化する可能性がありますが、なるべく身体に負担のない、効果的な移植方法が開発されることを期待して、今後の発展を見守りたいものです。

自己脂肪由来間葉系幹細胞移植のご案内

当クリニックでは、ご自身の脂肪細胞を採取して幹細胞を増殖・活性化を行い、点滴で投与して生体機能の向上を図る再生医療「自己脂肪由来間葉系幹細胞による点滴療法」を行っています。その際に、採取した幹細胞を保存する「幹細胞バンク」メニューも取り扱っています。興味のある方は、お問い合わせください。

※)自己脂肪由来間葉系幹細胞
更年期障害に対する自己脂肪由来間葉系幹細胞による点滴療法(再生医療第2種) :計画番号 PB3160029
自己脂肪由来間葉系幹細胞による点滴療法はこちら →

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