線維芽細胞は、人体の結合組織の中にある細胞で、年齢に関係なく活発に分裂を続けている細胞です。そして、この線維芽細胞の「分裂能力」が、今注目のiPS細胞を用いる再生医療の世界では、無くてはならない重要な働きを担っています。
このあまり知られていない「線維芽細胞」の働きは、いったいどのようなものなのでしょう?
線維芽細胞の働き
線維芽細胞は、細胞と細胞の間にある結合組織の基本となる細胞で、全身の肺・心臓・大動脈外膜・子宮・皮膚などに必ず存在している細胞のようです。
中でも美容と関係が深い、皮膚の真皮にも存在しているのが「真皮線維芽細胞」。そして、健康で若々し肌でいられるのは、この線維芽細胞の働きに関係があります。
私たち女性にとって、とても興味深い線維芽細胞について簡単に知っておきましょう。
1 美肌をつくる
皮膚の真皮層では、コラーゲンやエラスチンの線維が網状に形成していて、その間をヒアルロン酸が水分をたっぷり含んで埋まった構造になっています。この3つの成分こそが美肌への重要な役割を果たしています。そして、これらの美肌成分をつくり出している細胞が、線維芽細胞なのです。
加齢などで線維芽細胞の数が減ってしまうと、肌はシワやたるみとなってしまいます。美肌でいるためには、この線維芽細胞がいつでも活発に機能していることが重要になります。
2 古い細胞を分解し、新しい細胞を増やす
線維芽細胞は分裂が早いと言われ安定した分裂能力で、絶えず自分自身で新しい線維芽細胞を増やすことが可能です。同時に、役目が終わった古い細胞を分解する能力もあり、自身の力で新陳代謝を活発にする優れた細胞のようなのです。
一つの細胞は、およそ50回の細胞分裂を繰り返してその役目は終わり、分裂によってまた新しい細胞が生まれていく。この作業がすべて線維芽細胞自身で行われているのには驚かされます。
3 新しい血管を作る手助け
動脈や静脈などの太い血管は、線維芽細胞やコラーゲン、エラスチンなどで構成されています。血管の機能が低下すると、硬くもろい血管となり、血流も悪くなります。
線維芽細胞は、絶えず血管の近くにいて機能が低下すると、線維芽細胞からVEGF(Vascular endothelial growth factor)と呼ばれる細胞増殖因子が放出され、新しい血管をつくる時のサポートの役割を担っています。柔軟性のある血管を作ることは、人の健康と若々し肌を保つことに直結しているようです。
4 女性ホルモンをつくる
線維芽細胞は、男性ホルモンである「アンドロゲン」を、女性ホルモンの「エストロゲン」に変える酵素を出すことが知られています。エストロゲンには、コラーゲン生成を助け、お肌の潤いを保つ役割があります。
通常エストロゲンは、卵巣でつくられるのですが、30歳頃からは皮膚でのエストロゲンが増えるという研究報告があります。
5 傷を修復する
肌が怪我などで傷ついたとき、近くにあるたくさんの線維芽細胞が損傷部分に移動して、大量のコラーゲン(タンパク質)を作り出すことで、肌の修復を助けます。この時に、線維芽細胞の増殖能力がふるに発揮されると言われています。傷で損傷した部分は、線維芽細胞+毛細血管+コラーゲンの3つの力で丈夫な肌へと再生していくのです。
このように線維芽細胞は、コラーゲンを増やすだけでなく、老化のすべてを監視し必要な時には即時に作用する働きがあるようです。改めて人間の自然治癒力には驚かされます。
線維芽細胞が若い頃のように元気でいる限り、健康で若々しい肌でいられるということですね。
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線維芽細胞の質と数の関係
美肌のしくみ
シワやたるみのない肌を保つためには、質の良い線維芽細胞が必要です。
線維芽細胞は真皮の幹細胞(※1)から細胞分裂と分化を繰り返して作られます。そして、その線維芽細胞では、コラーゲンやエラスチンなどのタンパク質線維やヒアルロン酸などの美肌成分が生産されています。肌は、線維芽細胞の働きが活発だと、ふっくらと弾力のある健康な肌が維持できるわけです。
※1)幹細胞とは、分裂して自分のコピーを生み出す機能「自己複製能」と、自分とは異なる様々な細胞を生み出す機能「分化能」をもつ細胞のこと。
年齢と線維芽細胞の数の変化
年を重ねるたびに活発で良質な線維芽細胞数は減り、新しい線維芽細胞をつくる能力も低下してしまいます。真皮で作られるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸も減少して、肌は弾力を失いシワやたるみとなって現れてきます。
真皮内の線維芽細胞数は、30歳を過ぎると減少傾向にあり、それに比例して良質な繊維芽細胞の数と生産能力の低下で、真皮内のコラーゲンやエラスチンは40歳を境に急激に減少していくようです。
線維芽細胞の分裂能力
現在、美容業界で最も注目されている線維芽細胞。
私たちの体は多くの細胞によって作られていますが、他のどの細胞とも異なり、決まった役割を持たず、自分とまったく同じ細胞をコピーできる能力「分裂能力」が、線維芽細胞には備わっているようです。
この優れた性質を利用して、加齢で足りなくなった肌細胞を増殖させ、根本からの肌質を改善・回復させる再生医療がすでにスタートしています。止められない減少するコラーゲンやエラスチンを増やす方法として、線維芽細胞が欠かせない細胞のようなのです。
線維芽細胞を増やす「肌再生医療」
肌の再生医療は、若い時のご自分の皮膚から、線維芽細胞(幹細胞)を培養し、先端技術で長期間にわたって保存することが可能とされています。言ってみれば、若い時の細胞をタイムカプセルに封じ込めておくわけです。一度採取して培養した線維芽細胞は、30年間使用する事が可能なのだとか。
その後は、2〜3年に一度必要な時に気になる部分に注入することで、年齢で減少してしまった線維芽細胞を、再び若い時の細胞の力で増殖していけるという、シワやたるみなどの肌老化に対しての根本からの治療が可能になるのです。
誰もが持っている「線維芽細胞のパワー」
ところで、線維芽細胞の「分裂能力」は、活発に活動している線維芽細胞であれば、年齢に関係なく分裂を繰り返し、細胞を増やし続けることが可能なのだそうです。
ご自分の細胞を利用する肌再生医療なら、減少した線維芽細胞を再び増やして、健康な肌を保つことが充分期待できるかもしれません。しかも、保存技術が確立され、若い時に採取した細胞で、必要な時にいつでも良い状態の肌が維持できるのです。
今までの注入治療や、引き締める対処療法では対応できなかったことが、肌再生医療でやっと可能になったのです。
年齢に関係なく、誰もが持っている繊維芽細胞のパワーで、若い時の肌に時間を巻き戻せるかもしれません。
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