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脂肪注入による幹細胞移植とは

幹細胞 脂肪注入

幹細胞を使った再生医療は、治療する部位や目的によって、それぞれ移植する方法が異なります。点滴で全身に巡らせたり、目的の部位に注射器などで注入したり、あるいは治療部位に直接挿入したりするものも。

ここでは、脂肪注入による幹細胞移植について詳しく解説します。

治療に使われる幹細胞とは

幹細胞(Stem Cell)とは、私たちの体内に存在し、様々な細胞を生み出す能力をもった細胞のことです。自己と同じ幹細胞が増殖する【自己複製能力】と、他の組織細胞に変化する【分化能力】の2つの能力が備わっています。

再生医療に使われている幹細胞は「体性幹細胞」と呼ばれるもので、なかでも脂肪や骨髄から採取される「間葉系幹細胞」は、採取が容易で培養技術も確立されており、エイジングケアから病気の治療まで多方面に利用されています。

最近注目されているのは、歯の中にある「歯髄細胞(しずいさいぼう)」から採取される「歯髄幹細胞」です。今までは捨てるだけだった乳歯や親知らずから採取が可能で、歯の硬組織にガードされているため中の遺伝子に傷がつきにくいという特長があります。細胞の増殖能力が高く、短期間の培養で多量の採取が可能で、こちらも「間葉系幹細胞」にあたるため、さまざまな細胞に分化できます。将来的な治療に役立てるため、あるいは臨床応用のために歯髄細胞バンクも設立されています。

脂肪注入による幹細胞移植のメリット

幹細胞を脂肪と一緒に移植(注入)する方法には、幹細胞の働きを目的とする以外に、もうひとつメリットが挙げられます。それは「脂肪の定着率」が良くなるということです。

患者から脂肪吸引した脂肪細胞をそのまま注入する「脂肪注入」という方法は、以前から整形外科や美容外科などではメジャーな手法として確立されています。脂肪注入は主として失われた組織の充填や、乳房などにボリュームを出す目的で行われていますが、注入後に一定量以上の脂肪細胞は定着しないというデメリットがありました。実は脂肪が定着するためには、周辺の血管から酸素や栄養が運ばれなければなりませんが、血流には限りがあり、せっかく注入した脂肪細胞は生き残れなくなってしまうのです。

そこで、さまざまな細胞に変化することができる能力を持つ幹細胞を混ぜて注入することで、幹細胞の一部が血管の細胞そのものに分化し、血流が改善して定着率が向上しました。

脂肪注入による幹細胞移植の目的

上記のように、脂肪注入による肝細胞移植は「周辺組織の機能を再生する」ことと「ボリュームを出す」ことが可能です。そのため、以下のような目的の治療に適しています。

顔などの陥没の修復

病気や外傷などの理由で、顔の組織のボリュームが減り、大きくへこむ「顔面陥凹性病変」という病気に、幹細胞の脂肪注入が行われています。これまでは体の別の部位から採取した移植組織を血管でつなぐ手術が行われていましたが、血管をつなぐ高い技術が要求されることや、つないだ血管が血栓でつまって移植組織が壊死してしまうこと、組織の採取部だけでなく顔にも大きな傷ができることなどのリスクがありました。

幹細胞の脂肪注入では注射だけで移植を行うため、このような手術が不要になり、患者の負担もぐっと少なくなります。

顔のエイジングケア

加齢によって現れる顔のシミやしわ、頬の肉がげっそりと落ちる老化現象などの治療に、幹細胞の脂肪注入が行われています。深いシワに内側からボリュームを出し、顔にふくよかさを作りだします。

幹細胞が分泌する成長因子などのサイトカインや、皮膚細胞への分化誘導によって、長期にわたる効果が期待できます。

乳房再建と豊胸術

乳がんにより病変部分を切除した乳房の再建に、幹細胞の脂肪注入移植が行われています。通常の乳房再建術ではインプラント(シリコンでできた人工乳房)を挿入したり、体の一部の皮弁(皮膚・脂肪・筋肉など) を用いて再建する方法がとられていましたが、インプラント法では乳房が変形したり、皮弁法では切除した部分に傷が残ったり血流障害が起こるリスクがありました。

患者の脂肪を吸引して幹細胞を抽出し、培養後に純脂肪に混ぜて注入(移植)するだけの脂肪注入法は、傷も残らず、自分の組織のためアレルギーなどの危険性も低く、人工物でないため柔らかく温かい自然な乳房が再建できます。さらに、移植後の生着率も50〜70%と従来の方法と比べて高いといったメリットが挙げられます。

以上のことから、単純にバストアップを図りたいという美容医療の治療においても、脂肪注入による移植は多く選択されています。

脂肪注入による幹細胞移植の目的

ところで、移植のデメリットはないのでしょうか。

デメリットとしては、まず脂肪を採取しないといけないため、脂肪吸引によるリスクが挙げられます。脂肪吸引は手術であり、局所麻酔を施した腹部や臀部から、カニューレという細い管を差し込み脂肪を吸引(採取)します。皮膚を少し切開しますので、傷跡ができたり傷口が化膿する可能性があります。また、吸引時に組織を傷つけてしまうことも起こり得ます。

幹細胞が原因の事故には、上記でも述べた豊胸術において胸がほとんど大きくならなかったうえにしこりができるという事例があります。また、顔のシワを取るために移植した後に腫れてしまったという例もありました。これは幹細胞の移植量が原因と考えられており、当時はどの程度幹細胞を入れれば良いのか手探り状態であったため起こったトラブルです。現在では、治療数も増えてこのような事例は少なくなりつつあります。

幹細胞移植には他にも、静脈投与(点滴)や、培養物を直接患部に移植するといった方法があります。

脂肪注入は、体脂肪と一緒に移植することで、身体の欠損部分を再生できるといった大きなメリットが得られる治療です。再生医療はまだまだ発展途上の医療のため、今後も新たな治療法が確立されて、今まで難しかった治療に役立つ日が来ることに大きな期待が寄せられます。

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