肌のハリの元となる真皮幹細胞。年齢とともにその数量は減少してしまい、いつしか肌にはハリや潤いがなくなり、シワやたるみを招きます。減ってしまった幹細胞を再び補うことができれば、肌のハリは戻り、年齢に負けない若々しい肌を手に入れられることができるはずです。今コスメの世界では幹細胞という名のつくコスメの数が増えています。コスメで簡単に幹細胞を補うことなど果たして叶うのでしょうか?
そもそも幹細胞とはどんな細胞?
幹細胞はわたしたちの体に存在する細胞の一種で、体が健康に維持されるのも、ケガした箇所の傷が治るのも幹細胞のおかげです。幹細胞には、自分と同じ細胞を作りだす「自己複製能」と他の組織細胞に変化する「分化能」という2つの能力があります。今注目が集まっている再生医療の分野では、病気やケガで損失した臓器や機能を幹細胞の力で補う治療が行われています。
幹細胞はほぼ全身に存在しており、それぞれの場所で重要な役割を果たしています。肌に存在する幹細胞は2種類です。一つは表皮幹細胞といって肌の表面に存在し、肌の角化細胞を生みだす働きがあります。もう一つは真皮幹細胞で、肌の奥にある真皮に存在し、線維芽細胞を生み出しています。線維芽細胞とは、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の生みの親である肌の美しさのためには欠かせない細胞です。どの幹細胞も若さ、健康を維持するために必要なものですが、年齢とともにその総数は減少します。
とくに真皮の層の幹細胞の減少は、線維芽細胞の減少にもつながり、ひいてはコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸といった有効成分全体の減少であり、肌の老化に直結しているため、絶対に避けたいところです。
真皮へのケアが叶う? 幹細胞コスメの実力は?
とは言え、真皮は肌の奥にあるためケアすることが難しい場所です。また表皮が月単位でターンオーバーするのに対し、真皮のターンオーバーには3年という月日がかかります。そのために毎日のスキンケアや習慣でダメージを回避し、真皮幹細胞の減少を少しでも食い止めることが重要です。
そこで今人気があるのが、毎日スキンケアで使用する化粧水や美容液に幹細胞の培養液が配合された幹細胞コスメです。幹細胞コスメという名がついていたとしても、幹細胞そのものは化粧品に配合することはできません。そのため抗酸化作用のある植物の幹細胞、もしくはヒト由来の幹細胞を培養したときに出るヒト幹細胞培養液の上澄みが含まれています。近年はもっぱらヒト幹細胞培養液の上澄みが使用されています。幹細胞コスメでおすすめ人気ランキングの上位の化粧品もすべて幹細胞は含まれていません。
幹細胞の能力は上記した通りですが、幹細胞を培養した液だけでも、そこには幹細胞が分泌した成長因子や酵素、コラーゲンなどが含まれているため、一般的な化粧品とは違った効果が見込めるかもしれません。
また真皮幹細胞が安定して存在するためには成長因子の存在が欠かせませんが、その成長因子を化粧品で補うことができるならば、化粧品でも真皮までケアができる可能性もあります。
ただし、これは化粧品の美容成分が上手く肌に浸透した場合のことです。化粧品の成分の含有量は、安全性の問題により薬機法で規制されています。自分が望むだけの有効成分を肌に届けられるかは明言できません。エステなどで幹細胞エステと名がつくものも同様で、使用されているのはヒト幹細胞培養液の上澄みのみです。
ヒト幹細胞療法とはまったくの別物
一方自分の幹細胞そのものを増強し、再注入する方法もあります。それがヒト間葉系幹細胞療法です。
方法は、クリニックで腹部の脂肪から間葉系幹細胞を採取し、専用の機関で増殖・培養し、再び点滴にて体内に再注入するだけといたって簡単です。ほかならぬ自分の細胞を使用すること、幹細胞を大量に培養すること、そして直接体内に幹細胞そのものを取り込むことで、その効果については想像しやすいはずです。
これまでの美容法は、足りなくなった成分を外から補うことで、対処する美容法でした。対して幹細胞療法は、足りなくなった成分を補うために、体の中に直接細胞の生みの親=幹細胞を届け、新たに成分を生み出させる美容法です。増えた幹細胞が新たに線維芽細胞を生み出し、線維芽細胞がコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を生み出し続けるため、水分、ハリ、つや、キメなどいつの間にか手に入れられます。間葉系幹細胞療法は、エイジングケアにとって対処ではなく根本的な解決になりうる治療法です。
ただし、これはどこのクリニックでも受けられる治療ではありません。ヒトの細胞を培養して、体内に戻すのですから当然ながら、厳しい施設基準をクリアした厚生労働省から再生医療の計画番号を取得したクリニックのみで受けることができます。
エイジングケア全般に効果が見られる
ヒト間葉系幹細胞療法は、肌だけでなく全身へ作用します。点滴で体内に戻される間葉系幹細胞は体内を巡りながら、老化が起こっている部位、細胞が足りない部位、修復が必要な部位をみつけては修復、その後必要な細胞に分化して回ります。どさまざまな細胞に分化するため、関節、血管、肌の再生の他にも男女の更年期症状の改善など、さまざまなエイジングサインを改善して回ります。一つの不調が改善されると、自然と別の不調も改善されるドミノ効果で全体のエイジングケアにもつながります。