難病の治療から美肌治療まで可能な、幹細胞を使った治療7例

幹細胞 幹細胞治療

再生医療で世界をリードする日本。iPS細胞の作製に成功したことにより、京都大学・iPS細胞研究所の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したニュースは記憶に新しいところです。

かつての日本は、幹細胞分野を新産業として育成し、世界をリードする国にしたいというビジョンを持ってはいたものの、再生医療に利用する幹細胞の研究では他国に後れをとっていました。当時「幹細胞最強国」として有名だったのは、お隣の韓国です。2011年に韓国で、幹細胞分野を新産業として育成するための法律「医薬品迅速許可制」が導入されると、これにヒントを得て、日本で2014年に再生医療関連法が制定されました。

再生医療関連法とは、「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律(再生医療推進法)」を中心に、臨床研究や自由診療、医療機器などの製造販売の規定を定めた法律です。その後、日本政府は巨額の研究費をはじめとしたハード面とソフト面から再生医療を支援し、今日では世界に先駆けた臨床試験が行われています。

今回は、この幹細胞を利用した最先端の治療はどのようなものがあるのかをご紹介します。

再生医療で治療に使われる幹細胞とは


まず最初に、再生医療で活用される主な幹細胞を3種類ご紹介します。

ES細胞

1998年に米ウィスコンシン大学で、不妊治療(体外受精)で余った受精卵を用いてES細胞が培養されました。ES細胞とは「胚性幹細胞」と呼ばれ、すべての細胞になる能力を持つ万能細胞のことです。ヒトに成長するはずの胚を使用するため、利用には倫理的な問題が残るものの、ES細胞の樹立により再生医療の現実化が期待されだしました。

iPS細胞

体細胞に遺伝子を導入して、人工的につくられた「人工多能性幹細胞」のことです。すべての細胞になる能力を持ち、血液や皮膚の細胞から作ることができるため、倫理的な問題はなく、怪我や病気で失った組織や臓器の治療応用が期待されています。2006年に山中伸弥教授らがマウスの実験で初めて作製に成功し、2007年にヒトで初めて作製に成功、2012年にこの研究が評価されてノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

成体幹細胞

もともと体の中に存在する、骨髄や脂肪から採取した幹細胞で、いくつかの異なった組織や臓器に分化する能力を持つ幹細胞のことです。ES細胞やiPS細胞のように、何にでもなれる幹細胞ではありませんが、倫理上の問題もなく、生物がもともと持つ細胞のため安全性も高いと考えられています。

iPS細胞やES細胞は、大学病院や国立の医療研究所センターでしか研究が許されていませんが、成体幹細胞を使った研究と治療は、広く一般の医療機関で受けることができます。

医療分野の幹細胞治療〈5例〉

再生医療には、病気を治療する目的の幹細胞治療と、美容目的の幹細胞治療があります。
ここでは医療分野での幹細胞治療を、5つご紹介します。

 iPS細胞の幹細胞治療例

①角膜上皮幹細胞疲弊症の治療例

2019年7月、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した角膜上皮細胞シートの移植が大阪大学医学部附属病院で行われました。これは、角膜上皮幹細胞が消失して視覚障害や失明の可能性もある「角膜上皮幹細胞疲弊症」という疾患を持つ患者を対象にした臨床研究です。

この病気の従来の治療はドナー角膜の移植ですが、拒絶反応やドナー不足などの問題がありました。これを解消するために、ヒトiPS細胞を用いた治療法の開発を行うことを目的とし、世界で初めての移植が行われたのです。患者は経過観察中で、同年内に2例目の移植も予定されています。

②パーキンソン病の治療例

大脳の下にある中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少することが原因で起こるパーキンソン病は、国の難病にも指定されています。動作が遅くなる・手足が震える・バランスが取れないなどの運動障害が現れて、やがて寝たきりになる可能性のある病気です。

iPS細胞を使って、ドパミン神経細胞に分化する手前の「ドパミン神経前駆細胞」を作製し、脳の被殻に直接注入(移植)する治験が2018年10月に京都大学医学部附属病院で行われました。動物を使った同様の実験では、脳内に成熟したドパミン神経細胞を効率的に生着させられることが明らかになっています。

 ES細胞の幹細胞治療例

③海外で行われているES細胞の臨床試験

作製過程で受精卵を壊すために倫理的問題が指摘されていたES細胞ですが、2014年の新しい指針で、治療を目的とした研究利用が可能になりました。さらに医療目的でのES細胞の利用が2017年に認められ、京都大学では不妊治療で余って廃棄する予定だった受精卵からES細胞を作り、大学や企業に提供を開始しています。

米国や韓国では、ヒトES細胞を使った再生医療の臨床試験がすでに行われており、加齢黄斑変性、脊髄損傷や糖尿病の臨床試験が進められています。

 成体幹細胞の幹細胞治療例

④アトピー性皮膚炎の幹細胞治療例

身体を守る免疫が過剰に反応して自分の身体を傷害する自己免疫疾患の一種であるアトピー性皮膚炎。通常の治療では、かゆみや湿疹を抑えるための対処療法が行われています。

再生医療では、成体幹細胞の一種である自己脂肪由来間葉系幹細胞を点滴投与する治療を行います。間葉系幹細胞が持つ抗炎症作用と免疫抑制作用で、体内から皮膚の状態が改善され、肌の細胞が活性化されることが期待されています。

⑤変形性膝関節症の幹細胞治療

膝関節にある軟骨の損傷で、痛みや炎症などを生じる変形性膝関節症の治療にも、自己脂肪由来間葉系幹細胞が使用されています。間葉系幹細胞は、神経や血管系などの細胞・組織へ分化する能力を持っています。膝関節に幹細胞を注入することで、患部の細胞を修復し、抗炎症作用、痛み抑制物質の産生能力により、膝関節内の炎症を抑えて痛みの緩和を目指します。

海外の治療レポートでは、症状の緩和だけでなく、膝軟骨の厚みが増した例も報告されています※。

https://stemcellsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.5966/sctm.2015-0245

美容分野の幹細胞治療〈2例〉

美容分野の幹細胞を応用した再生医療をご紹介します。

⑥乳がん術後の乳房再建例

乳がんの外科手術後に、乳房の形を整える再生医療が、鳥取大学医学部附属病院で行われています。自己脂肪組織由来細胞(含む幹細胞)を治療で失った乳房部分に注入し、大きさと形を整えるという臨床研究です。

注入された幹細胞は血管を新生し、脂肪だけを注入する治療法よりも生着率が高い(90%)といわれています。

⑦幹細胞培養上清液を使った美肌治療

幹細胞培養上清液とは、さまざまな細胞に分化・増殖する能力を持つ臍帯由来の幹細胞を培養する際に得られる高純度の上澄み液で、幹細胞自体は含まれません。培養中に幹細胞から放出される500〜700種類のサイトカイン群(成長因子、免疫調整因子、抗炎症性因子、神経再生因子など)を豊富に含む上清液を、肌に注入したり塗布することで、肌の若返り治療を行います。

この治療は、再生医療を応用した一般的な治療にあたります。そのため近年、幹細胞培養上清液を配合した化粧品類を見かけるようになりましたが、配合率の低さと化粧品としての効果効能の限界から、あまり効果に期待はできないと考えられています。

難病の治療から美容目的の治療まで、幹細胞を使用・応用した治療を挙げてみました。臨床応用を進めることで、安全性と効果の検証が進み、いずれは失われた臓器などの再建にも期待がかけられています。
当クリニックでも厚生労働省の認可を受け、安全性に配慮しながら幹細胞を応用した再生医療を行っています。再生医療を治療の選択肢として検討されている方は、ぜひお問い合わせください。

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