私たちの体内では、1分間に3億の細胞が死滅して(全細胞数の0.0001%)、同時に100〜500億もの新しい細胞が生まれているのだそうです。
人は60兆個の細胞から成っていて、ほとんどの細胞は新陳代謝で活発に入れ替わることでその役割を維持している。これらの膨大な細胞の元になっているのが「線維芽細胞」だと言われています。今を時めくiPS細胞も、繊維芽細胞が無くては何も始まらない研究です。
いったい私たちにとって、線維芽細胞とはどんな役割があるのでしょうか?
線維芽細胞は「万能細胞」だった
線維芽細胞は、身体のあらゆる所に存在していて、例えば、指を切った時には皮膚に、肉離れの際には筋肉に、骨折した時には骨になる様々な細胞の元となる性質を持っていて、あらゆる細胞になれる可能性を秘めている細胞です。
●どんな細胞にも変身できる万能能力
線維芽細胞自体は小さな細胞なので、いきなり単体では他の細胞にはなれません。他の線維芽細胞と繋がったり、自身でコラーゲンを生成して、修復に必要な仮の細胞(肉芽細胞)へと徐々に変わっていき、分裂を繰返しながら最終的に皮膚や骨、筋肉、神経細胞(末梢神経など)にまで変わっていきます。
また、線維芽細胞には、必要な時にその場に応じた形で徐々に変化し、細胞を増やしていく安定した分裂を繰返す役目があり、再生医療などには欠かせない基本となる細胞のようです。
●iPS細胞の原料は線維芽細胞
iPS細胞を用いる再生医療は、病気の原因を解明し、新しい薬の開発などに活用できる無限の可能性があり、皮膚から採取した線維芽細胞を培養することによって、あらゆる組織や臓器細胞に分化する能力と、増殖できる能力をもつ多能性幹細胞に変化できるのです。
研究は、ここ数年でものすごい早さで進んでいますが、まだ実際の治療まではたどり着いていない段階です。
例えばこれまで、老化は身体のあらゆる場所が衰えることとされていたのですが、最新の細胞研究では、「免疫細胞(T細胞)の衰えがその根底にある」という事実が明らかになりつつあります。実際、免疫細胞は、思春期が始まると同時に生産を終えてしまい、年をとる毎にその能力は衰え、生活習慣病や多くの病気の原因の一つになっています。
そこで、iPS細胞で免疫細胞の老化そのものを防ごうとする、まったく新しい老化研究がはじまっているようです。
●肌と線維芽細胞
肌の真皮層にも線維芽細胞が存在していて、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを作り出しています。絶えずつくり出しているのではなく、細胞が紫外線やフリーラジカルなどで壊された時に、必要な量だけ新たに作られているのです。また、皮膚が傷ついた時にも、盛んにコラーゲンなどのたんぱく質を作り始め傷を修復します。健全な肌を維持するための司令塔のような役割が線維芽細胞には備わっているようです。
しかし、加齢などで活発な線維芽細胞が減ってしまうと、新しい肌の生産が少なくなることが、シワやたるみの原因になり肌老化を招いていると言われています。
美容と線維芽細胞
繊維芽細胞は、健康で若々しい肌をつくるために重要な役割があることが解りましたが、実際、美容医療の現場では、繊維芽細胞に働きかける施術にはどのよう方法があるのでしょうか。
●線維芽細胞を刺激するアプローチ
一般的なものには、タイトニング(引き締め)によって肌にハリを持たせるタイプのマシン治療です(光・高周波・レーザー治療など)。いずれも、それぞれの特性を活かした照射により細胞に何かしらの刺激や損傷を与え、人の自然治癒力を利用してコラーゲン生成を活性化させる治療法です。比較的ダウンタイムの少ない施術ですが、元々持っている線維芽細胞の数や質をベースにするので、その方の肌状態によって効果に差が出てしまうようです。
その他に、FGF注射(成長因子)やケミカルピーリングなども線維芽細胞を刺激するする治療法です。
●肌再生治療「線維芽細胞注入」
アメリカでは、皮膚の老化に伴い若返りの施術をする人が増えているようですが、今注目の方法が、線維芽細胞を利用してごく自然に若返るというもの。
自ら分裂をしながらコラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチンなどを作る線維芽細胞の性質を利用して、自分の線維芽細胞をシワなどに直接注射して若返える、肌再生医療が注目されています。
具体的には、自分のわずかな皮膚を採取して、1個の細胞から約1万倍の線維芽細胞を培養。その後、必要な量の線維芽細胞をシワやたるみに注入することで、真皮のコラーゲンやエラスチンを増やすことによって、肌の若返えりを可能にする根本治療になります。
まず、副作用の心配がなく、肌細胞の活性化と肌表面のハリや潤いが増し自然な若返りが期待できるのです。最大のメリットは、その保管技術によって(30年間可能)必要な時に「若い時の細胞」をいつでも注入できることにあります。
その他に、PRP療法はご自分の血液から抽出した血小板をメインにした医療ですが、血小板は線維芽細胞を呼び出す機能を持っており、再生医療に近い医療と言えます。
もともと血小板は傷を治すことで有名ですが、目元のシワや影、ほうれい線などに効力を発揮するようです。しかし、再生医療のような肌の根本治療とまではいかず、半年から1年程で再注入が必要になります。
いずれも、自分の細胞や血液を利用しますから、副作用などの心配のない安全性の高い治療方法です。
(繊維芽細胞注入の流れ)
●トータルウエルネスを考える「再生美容」
ナチュラルハーモニークリニック表参道では、専門的な「再生医療」の技術を軸に、今まで培ってきた美容医療との組み合せにより、お悩みの顔・頭皮・身体への美容と健康ケアを行うトータルウエルネスを目指す「再生美容」をご提案し、あなたの老化スピードのスローダウンと予防医療を目指しています。
●肌再生医療のクリニックを選ぶポイント
再生医療を行えるクリニックは、再生医療、第二種・第三種再生医療などの提供計画書を受理されていなければなりません。計画番号を保持し、症例数や治療内容、料金表記などが明確か、などを基準に選ぶことをお勧めします。
線維芽細胞療法 ご自身の線維芽細胞を移植してシワ・たるみを改善 →
PRP(多血小板血漿)を用いて、シワ・シミ・肌の凹凸などを肌の内側から改善 →
ステムサップ (脂肪由来幹細胞の培養上清)を使用する美肌治療 →
培養した線維芽細胞を直接人体に投与する方法は、すでに様々な治療に活用されています。再生医療の未来は、さらに、線維芽細胞を別の細胞に変えて使う、究極的には古くなった細胞を入れ替えて若返りが出来るとも言われています。
私たちの永遠のテーマ「老化と戦う」ために、線維芽細胞は、人の限界を超える可能性のある細胞となるかもしれません。