最近、新聞やテレビなどで「再生医療」という言葉を見聞きしたことはありませんか? 医療テクノロジーが驚くほど飛躍的に進化し続けている現在、今まで治療が難しかった病気や身体の欠損などが、この再生医療によって根本治療できるかも知れないと注目を集めています。
美容医療の分野ではどうでしょうか? 「肌が若返る?」「髪の毛が生えてくる?」と期待も大きい「再生美容」ともいうべき医療が、美容整形クリニックなどで、実はもうすでにスタートしているのです。そこでどのような治療が行われているのか、またどのようなクリニックに行けば受けられるのかを解説します。
そもそも再生医療とは?
再生医療とは人体の細胞や再生能力を利用して、病気などを治療する医療のことです。人間の欠損・損傷した部分や、機能低下した組織や臓器を、人工的に培養した細胞などを使って修復や再生を行い、その機能を補完します。
その治療には、人間の身体から採取した「幹細胞」という、いろいろな組織や臓器になれる未分化な細胞を主に使用します。この「幹細胞」とはどんなものなのか、代表的な幹細胞をご紹介します。
再生医療で注目される3種類の幹細胞
現在、私たちが受けることができる、もしくは将来その可能性がある幹細胞は、大きく3種類あります。それぞれメリットとデメリットがあり、ここではその違いをご説明します。
【1】ES細胞(胚性幹細胞)
1998年にアメリカのウィスコンシン大学で、不妊治療(体外受精)で余った受精卵を用いて樹立されました。あらゆる細胞に分化する万能細胞ですが、拒絶反応が起こる可能性と、腫瘍やがんになる可能性があります。また、将来人間になるはずの受精卵の胚を使用するため、倫理上の問題も指摘されています。
【2】iPS細胞(人工多能性幹細胞)
2007年に京都大学の山中伸弥教授らが、体細胞に遺伝子操作を行って開発しました。皮膚の体細胞を採取していくつかの遺伝子を加えて作製するため、倫理上の問題はありません。この発見で、2012年に山中教授はノーベル医学生理学賞を受賞しました。ES細胞と同じくどんな細胞にも分化する万能細胞ですが、腫瘍やがんになる可能性が指摘されています。
【3】体性幹細胞
人の骨髄や脂肪などに含まれている、人間がもともと持っている幹細胞です。特に皮下脂肪に含まれる「間葉系幹細胞」は、骨・軟骨・腱・脂肪・神経などへ分化する能力を持っています。患者の皮下脂肪などを採取して、培養後に点滴などで体内に戻す治療ですので体への負担も軽く、現在まで重篤な副作用は報告されていません。
肌の老化にアプローチする細胞や組織も
すでに美容整形クリニックなどでも、再生医療で肌の治療を行う「肌再生医療」がスタートしています。ここでは、どんな細胞や組織が使用されているのかをご紹介します。
【1】線維芽細胞
肌のハリや潤いのもととなる真皮成分(コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸)を生み出す細胞です。皮膚の真皮層の中に存在し、加齢によって減少することで真皮成分も減少し、シワやたるみなどの症状が現れます。患者自身から採取した線維芽細胞を細胞培養し、加齢症状が気になる部分に移植(注入)する治療が行われています。
【2】PRP(多血小板血漿)
人間の血液に含まれる血小板です。PRPには「成長因子」と呼ばれる、組織の修復を促進する物質が多く含まれています。ご自身の血液を採取して、遠心分離機でPRPを取り出し、シワやシミ、肌の凹凸などに注入する治療が行われています。
まだまだ多くの人に知られていない「肌再生医療」。従来の美容整形治療と何が異なるのか、また実際にどんな治療が行われているのかをご説明します。
肌の再生医療である「再生美容」時代の到来
従来の美容整形と「肌再生医療」の最大の違いは、「対症療法」であるか「根本治療」であるかです。
例えばヒアルロン酸をシワに注入する「プチ整形」は、注入した時点で“シワを埋める”ことはできますが、徐々に体内に吸収され、半年〜1年程度でもとのシワのある状態に戻ってしまいます。原因を取り除くのではなく、症状を和らげる「対症療法」にあたり、シワのない状態をキープしようとすると、繰り返し注入する必要がありました。
一方「線維芽細胞」や「PRP」を使った治療は、肌の内側からヒアルロン酸やコラーゲンなどを生成する本来の機能を回復させようとする「根本治療」にあたります。移植(注入)されたあと、吸収されずに肌機能の回復をサポートするため、1〜2回の治療で長期間に及ぶ効果持続が報告されています。短期間で繰り返し注入する必要もありません。
「線維芽細胞」と「PRP」の治療法
それでは、肌再生医療では実際にどんな治療を行っていて、どんな効果が期待できるのでしょうか。現在多くの美容整形クリニックが治療を導入している「線維芽細胞」と「PRP」の治療についてご説明します。
【1】線維芽細胞の治療法
患者の耳の裏から米粒大の皮膚と血液も採取します。採取した皮膚と血液は専門の「細胞培養センター」へと送られ、線維芽細胞を抽出・増殖培養されます。次に、クリニックで増殖培養された線維芽細胞を肌に移植します。移植の回数は、細胞の定着をより良くする目的で複数回行われます。
採取から培養までに5週間、2回目の治療までに2週間程度の期間が必要となります。培養された線維芽細胞は、希望に応じて凍結保存することもできます。
シワやたるみ、ハリやツヤなどの治療に適しています。
【2】PRPの治療法
患者の血液を採取し、遠心分離機を用いてPRPを抽出します。そのPRPを加齢症状が気になる部分に注入します。採血から注入まで約1時間と、スピーディに治療が行えます。ご自身の血液から成分を抽出するため、アレルギーなどの心配がほとんどありません。
小ジワやシワ、シミ、肌の凹凸などの治療に適しています。
肌再生医療は認可されたクリニックで
従来の美容治療とは異なり、根本治療の期待が高まる「肌再生医療」。ところが、どのクリニックで受けても良いというわけではありません。
新しい医療技術の行使にはリスクが伴うため、日本では以下のように厳しい基準が定められています。
・治療を行うには厚生労働省の認可が必要です
再生医療を行う美容クリニックは、厚生労働省が認可した特定認定再生医療委員会に「再生医療等提供計画」を提出し、基準に適合しているかどうかの審査を受けなければなりません。認可が下りた美容クリニックには計画番号が授与され、再生医療施設としてはじめて認められます。
さらに、線維芽細胞などを抽出・増殖する「細胞培養センター」は、こちらも届け出を行った「特定細胞加工物製造事業者」でなければなりません。
なかには無認可で肌再生医療を行うクリニックもあり、治療を受ける前にそのクリニックのホームページなどで、認可されているかどうかを確認することが重要です。
・ナチュラルハーモニークリニック表参道は認可されたクリニックです
ナチュラルハーモニークリニック表参道では、肌再生医療として「線維芽細胞」と「PRP」を用いたエイジングケア治療をおこなっています。「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」を遵守し、再生医療第2種と再生医療第3種の提供計画書が受理されています。
※)線維芽細胞
自家培養真皮線維芽細胞移植術(再生医療第2種) :計画番号 PB3170025
線維芽細胞を使用した治療はこちら →
※)PRP
多血小板血漿を用いた皮膚再生治療(再生医療第3種):計画番号 PC3170143
PRPを使用した治療はこちら →
日本では長寿社会が到来し、現役でいる時間が長くなりつつあります。そんな時代のなかで「若々しくありたい」という希望は、男女問わず当たり前にもっている気持ちです。シワやたるみが目立たなくなり、見た目の年齢が下がることで、毎日を前向きに過ごすことができるー。肌再生医療はそのような助けになりうる医療と言えます。ダウンタイムなどの負担が少なく、深い加齢症状にも対応しています。何より根本治療であることが、大きな魅力です。