キレイになろうとして失敗… 美容医療にひそむリスクとは?

失敗 肌再生医療

近年、日本では一般的なものとして認知されつつある「美容医療」。整形や皮膚の治療などを行うことによって、コンプレックスの解消や肌の若返りを図ります。2017年に日本美容外科学会が国内の3,656院の対象医療機関に行った調査(※)では、のべ190万件以上もの施術が行われたことが明らかになっています。これは世界的にも上位にランキングされるほどの施術数です。

このように日本では多くの方々が“キレイになりたい”“見た目を整えたい”と、時間とお金を費やし美容医療を受けていますが、なかには希望と反対の結果に終わるケースもあります。例えば、手軽な印象のある美容皮膚科の治療においても、医療事故によって健康が損なわれた、あるいは以前の状態よりも悪くなってしまったなどの失敗リスクがあります。

具体的にはどんな失敗が多いのかを見てみましょう。

※第1回/全国美容医療実態調査報告書 https://www.jsaps.com/jsaps_explore.html

美容皮膚科の失敗例

ケミカルピーリングの失敗

ケミカルピーリングとは、シミやくすみ、ニキビ・ニキビ跡、毛穴の黒ずみなどの改善を目的としたスキンケア治療です。肌に直接酸性の化学薬品を塗布し、5〜10分程度浸透させたあと中和します。人工的に皮膚の表皮を剥離することで、シミやニキビなどの肌悩みの解消を図ります。日本では1990年代に広まり、多くのエステサロンや美容クリニックで行われるようになりましたが、安全基準が曖昧なまま広まったため、腫れや炎症などの皮膚トラブルが相次ぎました。このときに起こったトラブルには以下のようなケースがありました。(国民生活センターの消費者被害注意情報より引用・2000年2月発行)

皮膚障害

「唇が裂けてあごの回りや顔面がふくれてボコボコ状態」「腫れて出血して顔面びらんに」「施術直後より肌が赤みを帯び、顔中傷あとのようになった」「かさぶたができそのあとがシミになった」

やけど

「施術直後に顔がピリピリし、夜真っ赤に腫れ上がり、翌日水ぶくれになった」「あご部分だけやけど状態になった」

「使用溶液が眼に入り、両目角膜びらんになった」

これを受けて、2000年2月に国民生活センターがケミカルピーリングの適正化を要望し、同年11月には厚生労働省より「ケミカルピーリングは医師のみ行える医療行為であり、クリニックなどの医療機関で受けるべき」との通達がなされました。これにより現在ではエステサロンでのピーリング剤の濃度は規制され、高濃度のケミカルピーリングは医療機関でのみ受けられるようになり、深刻なトラブルは減少しています。

医療レーザー治療の失敗

ひとくちに医療レーザーといっても、目的に応じた様々な種類のものが存在します。メラニンに反応しシミやくすみを治療するもの、ヘモグロビンに反応し血管腫や赤ら顔を治療するもの、水分に反応しイボやほくろなどを治療するもの、真皮に働きかけて肌の再生を促すもの、真皮より深い筋膜にまで届いてたるみを改善するもの、そして脱毛を目的としたものなどがあります。ここでは、最も人気のあるシミやくすみを治療するレーザーの失敗に触れます。

シミ取りレーザー治療の失敗と思われる結果には、以下のようなケースがあります。

ヤケドや水ぶくれなどのダメージが残った

レーザー治療が高出力で行われた時に起こります。これは予め医師から説明される「リスク」に含まれている症状であり、必ずしも失敗というわけではありません。こうなった場合は炎症止めの薬を処方してもらうことで、症状はほとんど収まります。

以前の状態よりもシミが濃くなってしまった

レーザー治療後に一時的にシミが濃くなる場合があります。これは炎症後色素沈着(戻りシミ)と呼ばれ、2人に1人前後は発症すると考えられています。レーザー照射によってメラノサイトが刺激されて新たな黒色メラニンが生成される場合と、黒色メラニンが正常に排出されない場合に起こりえます。厳密には失敗ではなく、日本人の肌質によるもので、治療後数ヶ月から1年程度かけて徐々に薄くなっていくと言われています。

注入治療の失敗

注射だけでシワや顔の形などを治療する注入治療は、メスを使わない「プチ整形」として人気です。ヒアルロン酸やボツリヌストキシンなどを1度注入すると、個人差はありますが半年〜1年程度効果が続きます。これは薬剤が徐々に分解・吸収されるためです。手軽で安全性が高い印象ですが、トラブルも多く報告されています。

注入治療の失敗と思われる結果には、以下のようなケースがあります。

注入技術による失敗

注射する部位が悪ければ、血行障害が起こります。目の近くに注入して失明したという症例は海外でも報告されています。また技術経験が少ない医師が注入を行い、皮膚に凸凹ができてしまった失敗例もあります。

吸収されにくい充填剤による失敗

通常半年〜1年程度持続する効果をより長続きさせるために、吸収されにくい充填剤が開発されました。「アルカミド」や「カルシウムハイドロキシアパタイト」が主成分のもので、一度注入すると形が長持ちします。この注入剤により強い痛みや失明、皮膚の壊死、腫瘍の発症などのトラブルが発生し、医師に損害賠償を求める訴訟も起こされています。

また安全性が高いとされるヒアルロン酸ですが、体内に定着させるための非吸収成分も含まれているため、上記のような失敗が起こる可能性もゼロではありません。

入れすぎ(過矯正)による失敗

医師の経験不足により“どの程度注入すると顔のバランスが良いか”を考えずに、注入しすぎるといったケースがあります。過剰にヒアルロン酸を取り込むと、顔がパンパンに膨れたようになります。また、打ち過ぎで不自然な顔になるケースもあります。

失敗リスクの低い美容医療とは?

それでは、よりリスクの低い美容医療はあるのでしょうか?

ケミカルピーリングや、医療レーザー、注入療法は、薬品やレーザー光線を使った治療です。異物や刺激に頼った治療ではなく、自分自身の細胞や組織を使った治療ならどうでしょうか。それが再生医療を応用した「肌再生医療」です。代表的な治療に「線維芽細胞治療」と「PRP治療」が挙げられます。

「線維芽細胞治療」とは、患者の皮膚と血液から抽出された線維芽細胞を培養・増殖して、ふたたびシワなどの加齢が気になる部位に注入する治療法です。線維芽細胞とは、真皮内部で加齢によって減少するコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンなどを生み出すお母さんのような細胞です。増量して質の高まった線維芽細胞を注入することで、肌の内部から自然な肌の若返りを図ります。

「PRP治療」とは、患者の血液からPRP(多血小板血漿)を抽出し、ふたたび加齢が気になる部位に注入する治療法です。PRPには「成長因子」と呼ばれる体の細胞を蘇らせる成分が多く含まれており、肌の内部に注入すると成長因子が放出され、コラーゲンの生成や表皮の成長などが促されます。

どちらもヒアルロン酸などの薬品や異物を使わず、人間の持っている力を応用した美容医療になります。これらの治療はリスクがないわけではありませんが、少なくとも薬剤やレーザーによる刺激で起こりうるリスクは回避できるといえるでしょう。

※)線維芽細胞
自家培養真皮線維芽細胞移植術(再生医療第2種) :計画番号 PB3170025

線維芽細胞を使用した治療はこちら →

※)PRP
多血小板血漿を用いた皮膚再生治療(再生医療第3種):計画番号 PC3170143

PRPを使用した治療はこちら →

美容医療のリスクについて

そもそも医療行為においては、通常の保険診療でさえ100%失敗やリスクがないというわけではありません。

ただし、背後には事故をなくそうとたゆまぬ努力を重ねる医療関係者や、技術の向上や進化を追い求める企業などがあることも事実です。まだスタートしたばかりの新しい再生医療も技術進化に限っていえば、世界のトップを走っている京都大学 iPS細胞研究所の山中伸弥教授ですら、研究では「9回失敗しないと1回の成功は手に入らない」と述べています。

“キレイになりたい”“見た目を整えたい”とこれから美容医療を受けようと考えている方は、まずそのリスクをしっかり認識しましょう。さらに不安な場合は、クリニックの医師に相談するのも良い方法です。リスクと結果のバランスを認識し、自ら納得して治療を受けることをおすすめします。

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